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現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』

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世田谷パブリックシアターにて見てきました。

 

現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』

 

毎度おなじみイキウメの作・演出をしている前川さんの舞台を見てきました。

前回(第1回)を見逃してしまったんですが、その時は小泉八雲のお話を前川さんがアレンジして舞台化したみたいですね。(参考URL

企画・監修は野村萬斎さん。

 

で、今回は能を現代風にアレンジ、とのこと。

せっかくなので能に詳しいお友達と一緒に見に行ってきました。

 

以下ネタバレを含みます。

 

簡単なあらすじ

久しぶりに地元に帰ってきたとある青年。

青年の実家は神社で、地元のその土地は自然災害に見舞われた直後の過疎地です。

青年が久しぶりに帰ってきた社で出会ったのは、その社に住んでいるという男。社の周りにはなにやら奇妙な人たちがうろつく中、偶然社に訪れた村の役人2人を交えて、男はなにやら昔話をはじめました。

子供を事故で亡くした夫婦の話。

行き倒れの通行人と目が合ってしまった男の話。

妻を亡くし、精神を病んだ男の話。

そして、この社のある日の話と、社の周りをうろつく人達の正体。

死者がいる。
この世にいないものを死者というが、死者がいる、と私達は言います。
過去、と言い換えてもいい。かつてここにいたのだから。

 

能の基本形について

舞台を見終わった感想としては、いつもの前川さんの舞台とあまり変わらないかな・・・?という印象でした。

で、お友達に感激後、能についてのお話を聞きつつ納得。

その辺の解説はパンフレットにも書いてありました。

 

能の基本形は、

・僧侶がある土地を訪れる。

・土地にはとある語り手がいる。

・その土地には過去悲劇的なことがあり、語り手は実はその当事者の一人

・その「出来事」を僧侶に「語る」ことで成仏する。

・「語る」事が過去を語る装置になっている。

・能舞台は狂言を間に挟んで、緩急をつけた構成になっている

・基本的に、現世の役者と異界の役者は固定

というパターンが存在するらしいのですが、こういった「構成」のみを拝借して、通常の現代劇を組んだようでした。

 

元々前川さんのかかれるお話は、現実から1層上のレイヤーのオカルト的な話が多くて、現実とそのレイヤーの境界線で戸惑う人が主役であることが多いです。

なので、「死者の声を聞く」というこの主題は能という文化にすごく入りやすいきっかけを作ってくれました。(おそらく能の良さは舞とか衣装とかの美しさにもあるのでしょうけど。)

 

「負い目」と「鎮魂」の文化

パンフレットで萬斎さんと前川さんの対談が載っているのですが、かなり興味深い話が。

近・現代の作品は人間が自我に目覚めて以降の創作なので、非常に人間中心の目線で作られている(中略) 一方の能・狂言は神様、亡霊、鬼など人間を凌駕するスピリチュアルな存在がしょっちゅう出て来る。人間を相対的に見つめた視点がそこにあるんじゃないか、と。

演劇の発祥は、ギリシャの祭事の際の儀式から生まれたということを昔学んだ記憶があるのですが、その頃から「見えないものを崇拝するための媒介」として「舞台」があったんだろうなぁ、と。

古典芸能はそれを受け継いでいるんですね。

 

「負い目を感じる相手に対して祀り(祭り)を行う。」「魂を鎮めることは人間の中にある感情の負い目を消化することでもある」「負い目を持つのはきっと人間だけ」

会話内の引用なのでだいぶ端折ってますけど。

 

見えないものに対しての敬意、から目の前の相手への敬意へ。

死者は見えないもの、ですけど自分にとっては見えていたはずのもの。

今回のお話は「相手の話を聞く」ということを堀下げた 舞台だったのかな、と思いました。

 

観客と舞台、僧侶と語り手。

基本的に映画と違って舞台はチケット代がそれなりにするので、安心してオススメできる舞台ってそれなりのお値段しちゃうんです。

なので、基本ひとりで見に行くことが多いのですが、今回一緒に行ってくれた@tobotoboto さんと観劇後いろいろお話できたのがすごーーーく楽しかったです!!

特に能についてのお話を聞けたので、より反芻しつつ楽しめました。

 

同じお話を見ていても、舞台・役者自体が媒介になっていて、見てる人が体験してるのはそれそれの過去の自分の話であったり、またそれ以外の何かであったり。

それは舞台上での登場人物が、語り手の話を聞いて何かを体験するのと同じ構造が出来てるんですね。

 

そのうちちゃんと能も見て見たいなー。

 

 

 

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